阿久津君が筆頭著者の論文 “Intra-species variation of ovipositor morphology and oviposition preference in Drosophila suzukii (Diptera: Drosophilidae)” が Applied Entomology and Zoology 誌上で公開されました。(Open Access)
外来生物は、侵入先で大きな被害を与え問題になるのに対し、原産地では目立たないごく普通の種であることが良くあります。外来生物の原産地における生態を明らかにすることは、侵入先での被害を抑えるためにも有用な知見を与えてくれるでしょう。
ところが、特に侵入害虫のケースでは、問題となっている侵入先では盛んに研究が行われるのに対し、原産地での研究はないがしろにされる傾向があります。被害の出ていない原産地では研究へのサポートもないということかもしれませんが、これでは外来生物の被害が拡大するメカニズムを完全に理解することはできません。
オウトウショウジョウバエは東アジアが原産の昆虫ですが、2008年以降、世界各地で侵入害虫として大きな被害を与えています。他のショウジョウバエと異なり産卵管が大きく硬くなっているため、樹上にある無傷の果実にも産卵できることがオウトウショウジョウバエの特徴で、害虫化した鍵形質でもあります。
今回の研究では、日本各地から収集したオウトウショウジョウバエについて、産卵管の形態について精密な計測と比較を行いました。その結果、産卵管の大きさが地域によって異なることが明らかになりました。興味深いことに、体の他の部分のサイズについてはそのような地域間差は見られず、産卵管のサイズに特異的な自然選択が働いている可能性が示唆されました。
今後は侵入先での産卵管サイズも同様に調べることで、原産地と侵入先で産卵管形態の多様性がどのように変化しているのか、それが被害拡大とどのようなかかわりを持つのかなどが明らかになるものと期待されます。