再交尾時における求愛行動の意義に関する論文が公開

再交尾時における求愛行動の意義に関する論文が公開

嶺川君が筆頭著者の論文がAnimal Behaviour誌に公開されました。

The adaptive role of a species-specific courtship behaviour in coping with remating suppression of mated females
Kazuyoshi Minekawa, Takahisa Miyatake, Yukio Ishikawa, Takashi Matsuo
(6月22日までこちらからOpen Access)
昆虫のメスは、1連の産卵に先んじて複数のオスと交尾することが良くあります。この場合、メスの体内では異なるオスに由来する精子の間で子の父性をめぐる争いが生じることになります(精子競争)。
キイロショウジョウバエでは、後から交尾したオスの精子が先に交尾したオスの精子を押し出してしまうこと(精子置換)、これに対抗して先に交尾したオスは精巣由来ペプチドの働きでメスの交尾受容性を下げてしまうこと(再交尾抑制)が知られています。つまり、後から交尾するオスは精子競争で有利であるにもかかわらずその力を再交尾抑制によって封じられていることになります。
このような状況下では、先手オスの再交尾抑制を打破するようないかなる手段の進化も後手オスにとって有利に働くと考えられます。
この論文では、テナガショウジョウバエにおいても
1.あとから交尾したオスの方が精子競争において有利であること
2.交尾直後のメスの受容性は低くなり、再交尾しにくいこと
を確認しました。その上で、
3.脚の先端を切ってLeg vibrationをできなくしたオスは既交尾メスと再交尾できなくなることを示しました。
これは、テナガショウジョウバエに固有の求愛行動であるLeg vibrationは、全てのオスにとって同等の意義があるのではなく、先に交尾するオスよりもあとから交尾するオスにとってより有用であることを意味しています。だとすると、新しい求愛行動であるLeg vibration(交尾前のオスメス間の相互作用)の進化が、それとは一見関係のなさそうな精子競争(交尾後のオス間の争い)の存在によって促進された、ということになるのかもしれません。