第69回日本生態学会大会において、網野君の「深層学習の特徴抽出過程を利用したチョウ翅模様の形質間距離の解析」と題したポスター発表が進化・数理部門での優秀賞に選ばれました。
以下、本人による解説です。
- チョウの擬態(毒のないチョウが毒を持つチョウに似るベイツ型擬態, 毒を持つチョウ同士が似るミュラー型擬態など)は長い研究の歴史がありますが、擬態していると思われる種同士がどれだけ似ているのかを定量的に調べられたケースは少なく、時に専門家同士で意見が食い違うこともあります。
- 近年画像分類で成果を上げている深層学習は類似度評価にも有効なことから、上記の問題を解決するのに役立つと思われます。
- まず、深層学習をベースとした画像間の類似度指標LPIPSを用いてチョウ標本画像から種同士の類似度を調べました。すると、LPIPSは既に知られている(捕食者に対しても効果があることが実験的に分かっている)擬態関係を再現していたことから、チョウの標本画像に対しても有効な指標であると考えられました。
- さらに、これまで擬態/非擬態の判断が難しかった事例などをLPIPSによって判定したところ、先行研究が前提としている類似関係とは異なる結果が得られることもありました。
- AIを利用することで、先入観にとらわれることなく生物の模様が持つ機能に着目することができるかもしれません。