性的二型にかかる性選択圧に関する論文が公開

性的二型にかかる性選択圧に関する論文が公開

網野君が筆頭著者の論文が Zoological Science 誌に公開されました。

Intra- versus inter-sexual selection on sexually dimorphic traits in Drosophila prolongata. Zoological Science, 37(3): 210-216 (2020).

性選択は、異性間に働くものと同性間で働くものの2種類があるとされています。例えばメスにとって魅力的な装飾形質は異性間に働く性選択によって、オス同士の闘争に用いられる武器形質は同性間に働く性選択によって、それぞれ進化すると考えられます。

テナガショウジョウバエは顕著な性的二型を持ち、オスの方が体が大きい上に前脚が誇張化されているのですが、それぞれがどちらの性選択によって進化したのかは分かっていませんでした。例えば、肥大化した前脚はオス同士の闘争に用いられる武器なのかもしれませんし、メスを引き付ける飾りなのかもしれません。

今回の論文では、体や前脚の大きさが闘争や交尾行動の結果とどのように関連しているかを調べました。その結果、

  • オスは大きな前脚を持つ相手との闘争を避ける。
  • 体の大きなオスは躊躇せず闘争を開始する。

傾向があることがわかりました。その一方、

  • 体の大きなメスはオスから求愛を受けやすい。
  • 体の小さなオスは躊躇せず求愛を開始する。

傾向があるものの、特に体や前脚が大きいオスの方が交尾しやすいわけではありませんでした。

以上の結果は、少なくとも現時点では異性間よりも同性間にかかる性選択(闘争行動)の方がテナガショウジョウバエの性的二型の維持に寄与していることを示唆しています。しかしながら、この実験方法では異性間の性選択が検出しにくかったのかもしれませんし、過去(つまり現在の性的二型が生み出された過程)においてどのような選択圧がかかったのかについてはもちろん何ら可能性を排除するものではありません。

今後は、体や前脚の大きさを人為的に操作して同様の実験を行うことにより、なぜこのような性的二型が進化したのかという問題に迫れると期待しています。