ショウジョウバエの曲面選好性に関する論文が公開

ショウジョウバエの曲面選好性に関する論文が公開

阿久津君が筆頭著者の論文 “Oviposition preference for spherical surfaces is shared among multiple Drosophila species except D. melanogaster (Diptera: Drosophilidae)” が Entomological Science 誌で公開されました。 (Open Access)

私たちは昨年、オウトウショウジョウバエが曲面に好んで産卵することを報告しました。この際、比較対象としてキイロショウジョウバエを用いましたが、

  • オウトウショウジョウバエが曲面選好性を獲得したのか
  • キイロショウジョウバエが曲面選好性を失ったのか

は不明でした。後者の場合、

  • キイロショウジョウバエが実験室内で(平面の培地を用いて)長い間飼育されている間に曲面選好性を失った

という可能性もあります。

そこで今回、野外から新たに3種のショウジョウバエを採集し、速やかに産卵選好性を調べました。その結果、

  • オウトウショウジョウバエの他にも、2種のショウジョウバエが曲面選好性を示した。
  • 野外から採集したばかりのキイロショウジョウバエは曲面選好性を示さなかった。

ということがわかりました。これは、キイロショウジョウバエだけが曲面に好んで産卵するという性質を失っていること、そしてそれは野外ですでに起こっていたことを示唆しています。

なぜキイロショウジョウバエだけがこの性質を失ったのかはわかりませんが、本種だけが人家に侵入してヒトの食物の残渣にも産卵する生態を持っていることと何か関係があるかもしれません。例えば、野外での繁殖場所となる果実は曲面を持っていますが、ヒトが収穫して加工した果実は元の形状をとどめていないことが多いでしょう。このような加工された果実に産卵できることで、キイロショウジョウバエはヒトとの結びつきを強めたかもしれません。キイロショウジョウバエはヒトの活動と共に世界中に広まりました。産卵行動の変化がその原因となっていたとしたら、大変興味深いことです。