求愛行動の発達に関する論文が公開

求愛行動の発達に関する論文が公開

昆虫の行動は、成虫に羽化した時点で完成しているのでしょうか?いくつかの例で、羽化後の時間経過に伴って行動が変化することが知られています。例えば、社会性昆虫のワーカーでは日齢に応じた分業(若いうちは巣の中で働くが齢が進むと外に出る)が報告されています。

テナガショウジョウバエの求愛行動は”leg vibration”という複雑な動きを含んでいます。羽化したての若い成虫でもleg vibrationをこなせるのでしょうか、それともある程度成熟しないと行えないのでしょうか?調べてみたところ、羽化後1週間ほどたった成熟した成虫はleg vibrationを伴う丁寧な求愛を行ってから交尾を試みるのに対して、若い成虫はleg vibrationをしないでいきなり交尾しようとすることが分かりました。未熟なオスはぶしつけで正しい段取りを踏まないというわけです。

さらに、羽化後に1匹ずつ隔離していた場合と、他のオスと一緒にしていた場合で求愛行動の発達に違いがあるかを調べたところ、他のオスと一緒だった場合にはleg vibrationを控える傾向が観察されました。しかし、1週間他のオスと一緒にいても1日だけ単独飼育すると通常通りleg vibrationを行うように回復しました。他のオスの存在(社会的条件)は行動の発達に影響を与えたというよりも、ライバルの存在に応じて求愛行動を変えるオスの可塑的な戦術転換だったようです。

以上の結果は次の論文として公表されています。

Effect of social condition on behavioral development during early adult phase in Drosophila prolongata. Journal of Ethology, 36(1): 15-22. DOI:10.1007/s10164-017-0524-x

この論文が、Journal of Ethology誌の2018年度 Editor’s choice paperに選ばれ、Open access権が付与されました。

この論文の紹介動画を作っていただきました。