オウトウショウジョウバエの産卵場所選択に関する論文が公開

オウトウショウジョウバエの産卵場所選択に関する論文が公開

阿久津君が筆頭著者の論文 “Drosophila suzukii preferentially lays eggs on spherical surfaces with a smaller radius Scientific Reports (open access)” が公開されました。

オウトウショウジョウバエ(Drosophila suzukii)は東アジア原産のショウジョウバエの一種ですが、果物の侵入害虫として北米やヨーロッパをはじめ世界中で問題になっています。そのためその性質についてたくさんの研究が行われてきました。産卵場所選択の手がかりになる条件も重要な研究テーマであり、においや味、色や硬さなど様々な要因についてオウトウショウジョウバエの好みが調べられています。

オウトウショウジョウバエが産卵するのは、果物の中でもブルーベリーやラズベリーなどの小さい果実で、リンゴなどの大きな果実には産卵しません。その理由は、大きな果実の果皮は硬いのでオウトウショウジョウバエの産卵管では歯が立たないためだと考えられてきました。しかし、実際の果皮に匹敵するような硬さを持つ人工産卵基質を用意することは難しく、実験的に確かめられたわけではありません。

今回の研究で、我々はオウトウショウジョウバエが産卵場所表面の曲率に対して選好性を持ち、より曲率の高い(半径の小さい)曲面に好んで産卵することを発見しました。これは、なぜオウトウショウジョウバエが小さな果実に好んで産卵するのかについて新たな説明を与える成果です。またその後のさらなる実験により、これまでに調べられたどのような要因(味やにおいなどの産卵刺激)よりも曲率が強力にオウトウショウジョウバエの産卵を誘導することも明らかになりつつあります。

産卵基質の大きさが昆虫の寄主選択に与える効果については、石井象二郎による先駆的な研究があるものの、その後ごく限られた種について報告されているにすぎません。昆虫が曲率を介して産卵基質の大きさを感知するメカニズムや、どのような生態学的な意義があるのかなど、これまで見過ごされてきた問題についてオウトウショウジョウバエを用いて研究することができるかもしれません。

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